がん保険の選び方や見直し方が分からない理由はずばり、実際にがんになった時、どんなお金のかかり方をするかが分からず、ただ何となく「お金がかかりそう」というイメージだけで選ぶからです。この記事ではお金のかかり方のパターンとがん保険の種類を示した上で、どう選べば良いか解説します。
目 次
なぜ自信をもってがん保険を選べないか
がん保険に入っている方にお聞きしますが、いざあなたががんにかかった時、その保険で本当に大丈夫ですか?
加入する時は相談員の話に納得したとしても、時間が経ってもう忘れてしまったという方も多いのではないでしょうか。
がん保険の選び方についてはプロでも色々なことを言う人がいて、今ひとつ決まった見解というものがないような気がします。
なぜ統一されないかと言いますと、がんになるとどんなお金のかかり方をするのか、という大前提を知らずに保険を選んでいるからです。
それでは分かるわけがないのです。
例えば自動車保険の対人賠償保険の場合、万が一、お医者さんなど所得の高い人を死亡させた場合、億単位の賠償金を支払うケースもあります。
だから対人賠償保険は無制限で入りましょう、と言われるのです。
火災保険であれば、万が一自宅が全焼した時、同じものを建て直すのに必要な金額で加入しましょうと言われます。いずれも基準がはっきりしているのです。
でも、がん治療の場合はそれがモヤモヤした状態で「がん治療はお金がかかります」と抽象的におどかされて選んでいるので、何となく選んでしまうのです。これが間違いの元です。
そこでまず、多くの闘病記を読んで私が把握しているお金のかかり方のパターンを個別に解説していきます。
事前にどんながんにかかるのかということは、誰にも分かりません。せいぜい、ヘビースモーカーが肺がんになるだろうと予想できる程度でしょう。
そのため、どのがんにかかっても対応できるように保険を選ぶ必要があります。
がんのお金のかかり方
がんの治療で実際にかかった費用のデータ
アフラックが2011年にとったアンケートで、実際にがんの治療にいくらかかったかというデータがあります。
これを見れば一目瞭然ですが、200万円程度までで実に約90%が収まっています。
また、50万円程度と100万円程度で合わせて6割です。これなら貯蓄でも対応できるという方が多いのではないでしょうか。
ですので、基本的に保険はあくまで”つなぎ”と考えて利用するのも1つの方法です。
お金のかかり方のパターン
- 普通の病気とあまり変わらない場合
- 治療法が複数あって、よりラクに治せる方法を使いたい場合
- 白血病のように長期入院が必要な場合
- 乳がんの場合
- ステージが進んでおり、様々な選択肢を試したい場合
がんも初期で発見されれば、ごく普通の病気(入院治療が必要なもの)と費用面ではそう変わりません。
なぜなら、治療が健康保険の使える範囲内で終わるからです。がんの治療法はどんどん進歩していますので、健康保険が使える治療法もたくさんあります。
このタイプについては、貯蓄があればがん保険どころか医療保険も不要です。
ただし、がんは再発を警戒して経過観察の期間が長いので、普通の病気よりも継続通院の費用がかかるかもしれませんが、保険で備えないといけないほどの負担にはならないことも多くあります。
この場合はそれなりにお金がかかることもあります。
例えばダビンチという手術支援ロボットがあります。ダビンチを使った手術ですが、現在はかなり多くの症状で健康保険が使えるようになっています。
しかし、以前は健康保険が使えませんでしたので、こちらを使う場合は自費でした。
前立腺がんの手術でダビンチを使った場合、以前は168万円の費用がかかりました。
参考 医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院ウェブサイト
ダビンチを使うと出血量が少ない、傷口が小さい、入院期間が短いなど、普通の開腹手術よりも比べてメリットが大きいのですが、こうした治療法を自らの意思で選択すると、費用がそれなりにかかることになります。
白血病は半年以上の長期入院を必要とする病気です。
治療については健康保険が使えますが、骨髄移植を受ける場合、ドナーが国内で見つからず、骨髄バンクを通じて海外で探すとなると、かなり高額な負担がかかることがあります。
また、長期入院が必要なので、仕事をやめざるを得ないという状況に追い込まれる可能性があります。
会社を辞めなくてよかったとしても、休んでいる間の収入が減るという問題もあります。会社員なら傷病手当金による補填がありますが、自営業の場合は自分がいないと回らない仕事の場合、収入がゼロになりかねません。
白血病は体験記を読めば分かりますが、本当に大変です。この時、お金に余裕がなかったら治療に専念できません。
乳がんは他のがんと比べて、意外なところにお金がかかることがあります。
乳がんは治療のために乳房を切除することがよくあるのですが、女性は切除した後、再建したいと希望する人が多いようです。
タレント・北斗晶さんのブログに、その心理が書いてありました。
[右乳房全摘出]を先生から告げられた時、あまりの恐怖とショックに初めて自分の事なんだと…泣きました。
なんとか乳房を全摘出せず、癌だけを取り除く事は出来ないのか?
せめて乳頭だけでも残せないか?
48歳と言っても、私だって女です。
胸を全て取る事の恐怖。普通にあるのが当たり前だった胸が乳頭までも全てなくなる。
直ぐには、主治医の先生に[分かりました!胸を全部取ってください。]とは言えませんでした。
これは当たり前だけど、女性なら40才だろうが50才だろうが60才だろうが、胸がなくなる事を直ぐに理解して即答できる人なんていないでしょう。(北斗晶オフィシャルブログより引用)
乳房再建は色々な方法があり、健康保険が使えるものもあるのですが、きれいに再建したい場合、健康保険が使えないものになってしまうようです。そうすると、100万円くらいの費用がかかることがあります。
また乳がんになるのはほとんど女性ですが、治療の影響で髪の毛がなくなった時、かつら(ウィッグ)を使うことが多いです。かつらもしっかりしたものだと結構、高いです。
あと、乳がんは一連の治療が終わっても、2年~5年ほどホルモン療法が必要になるケースが多いです。ですのでその間の費用もかかります。色々と予想外のお金がかかるのです。
がんが進行してから発見された場合、健康保険が使える通常の治療法では治る見込みがない場合があります。
そんな時に患者はどうするかと言うと、あらゆる選択肢を試そうとするのです。先日亡くなった小林麻央さんのケースでもそうでした。
「それから約1年4ヶ月、麻央さんは海老蔵に連れられてさまざまな治療法を試した。最先端治療からスピリチュアルな治療まで、ありとあらゆる方法を模索しました。」
(「女性自身」2017年7月18日号より引用)
正確な数字は分かりませんが、一説には1億円くらいの費用をかけたとの話もありました(ただし、差額ベッド代が一泊約5万円くらいとのことなので、治療費だけならもっと安いでしょう)。
ここまでお金をかけられる家庭はあまりないと思いますが、若いうちに末期がんと診断された場合、多少あやしくてもあらゆる選択肢を試したいと思う心理を理解しておいてください。
そして、選択肢を増やすにはお金があった方が良いということです。国内未承認の抗がん剤を海外から輸入して使うケースもよくあります。
がん保険のタイプ
がん保険にも色々な種類がありますので、よく理解してください。
- 診断された時点で100万円単位のまとまったお金が出るタイプ
- 入院・通院1日につき1万円、というタイプ
- 治療の種類に応じてお金がもらえるタイプ(抗がん剤治療、ホルモン療法、放射線治療)
- 実額補償タイプ
これががん保険の中では一番、人気があるタイプです。プロがよくおすすめするタイプでもあります。
前項で説明してきたとおり、がんはその種類によってお金のかかり方が違います。
そのため、がんと診断確定された時点でまとまったお金が出るタイプの方が、分かりやすく使い勝手がいいです。
入院や通院日数に合わせて払うタイプですと当然、入院や通院を終えてからでないと請求できませんので、その意味でもおすすめです。
医療保険と同じタイプです。
がんは通院で治す時代だからということで、がん保険は通院日数に応じて給付金が出るのが普通ですが、放射線治療のように通院回数が多くないとまとまったお金にはなりません。
なお、このタイプは白血病のように入院日数が多いがんの場合は給付金をたくさんもらえます。医療保険のように1入院あたりの日数の制限もありません。
抗がん剤治療をしたらいくら、ホルモン療法を受けたらいくら、放射線治療を受けたらいくらと決めているタイプです。これも給付金がもらえるケースが限られるので、あまり使い勝手が良くないです。
なお、放射線治療給付金については、一定の量の放射線照射を受けないと給付金が出ないという落とし穴があるので注意してください。
がんの治療に対して、実際にかかった費用を負担してくれるタイプの保険があります。
実額補償タイプのがん保険の例では、セコム損保の「MEDCOM(メディコム)」と、SBI損保の「SBI損保のがん保険 自由診療タイプ」があります。
実額補償タイプは先進医療や自由診療も対象になるので、こちらの方が結果的に手厚い補償になるかもしれません。
メディコムについてはセコム損保が指定している医療機関で治療を受けないと、保険金の支払い対象になりませんので注意してください。
おすすめのがん保険のタイプ
一時金か実額補償
私がおすすめする入り方は、がんと診断された時点で一時金が出る保険のみに入っておくか、実額補償タイプの保険に入るかのどちらかです。
一時金のみが出るタイプの場合、アフラックのデータを見て、100万円~300万円あたりで自分が必要だと思う金額、あるいは保険料と折り合いのつくところを選ぶのが良いです。
あと、これに先進医療特約をつけておけば良いでしょう。先進医療はがんの治療に使うものが多いので、いざという時の選択肢が広がります。
このタイプで有名なのが、AIG富士生命の「新がんベスト・ゴールドα」です。ただ、現在は似たような商品が他にもあるでしょうから、最新の情報を乗合代理店で探してもらうのが良いです。
参考 AIG富士生命の「新がんベスト・ゴールドα」
実額補償タイプのがん保険ではSBI損保のがん保険 自由診療タイプが良さそうです。
参考 SBI損保のがん保険 自由診療タイプ
こちらは十分検討していないのですが、ざっと見る限り、非常に幅広く対応している印象です。がんにかかった実際の費用は90%が200万円以内という話をしましたが、残り10%にも対応できるタイプの保険と言えます(※検証中ですので、見解が変わることもあります)。
その他の注意点
その他の注意点としては、再発に対応しているか、上皮内新生物は保障の範囲に含まれるかの2点があります。
がんは再発の不安が常にありますので、できれば再発に対応しているものを選びましょう。
ただし、一口に「再発」と言っても商品によってその定義が違ったりしますので、加入する時に代理店でしっかりと確認してもらってください。
良性のがん(≒上皮内新生物)については、保障の対象にしなくても良いです。
上皮内新生物でも治療が大変なケースもあると聞いたことがあるのですが、確率と保険料とのバランスを考えると、保障の対象にしなくても良いと考えています。
すべてのケースを保険で完璧にカバーしようと思うのはおすすめしません。むしろ、貯蓄が出来たら解約するつもりでいてほしいです。
まとめ
がんには様々な種類があり、お金のかかり方も色々なパターンがあります。そのすべてに対して完璧に対応できる保険はあまりありませんが、強いて言えば実額補償タイプの保険が一番、強いかもしれません。
こうした知識を踏まえ、後は代理店で実際の商品を解説してもらって十分、検討してください。なお、保険代理店の選び方については以下の記事で解説していますので、相談を検討している方は参考にしてください。