団信の三大疾病保障は、必要とは言えない。でも悪くない。

住宅ローンの団信(団体信用生命保険)に三大疾病保障をつけられる商品が多くなりました。そして、三大疾病だけでなく七疾病、八疾病、11疾病、全疾病と、対象となる範囲が拡大しています。この記事では、このうち三大疾病保障付き団信に絞り、その必要性について解説します。

FP横山

「必要」とは言いませんが、決して悪い商品ではないです。

住宅ローンの三大疾病保障つき団信とは

結論から言うと、団信の三大疾病保障は必要というほどでもありませんが、商品としては決して悪いものではありません。

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン契約者が死亡するか高度障害状態と認定されたときに、以降の住宅ローンを返済する義務が免除されるものです。

三大疾病保障付き団信は、これに加えて三大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)で所定の状態になったとき、同様に住宅ローンの返済が免除される商品です。

こうした商品は三大疾病以外のものを対象としたものもあります。大別すると以下のようになります。

  • がん団信
  • 三大疾病団信
  • 七疾病・八疾病・11疾病団信
  • 全疾病(就業不能保障)

この記事では、上記のうち三大疾病に焦点をあてて説明します。

住宅ローンの三大疾病保障つき団信の必要性について

保障の対象となる三大疾病を正確に理解しよう

三大疾病保障のついた団信は、どこの銀行で借りても商品に大きな違いはありません。対象となる三大疾病の定義もおおよそ同じです。具体的には以下のとおりです。

  • がん
  • 悪性新生物(進行がん)に生まれて初めてかかった場合が対象です。上皮内新生物と悪性黒色腫以外の皮膚がんは対象になりません。

  • 急性心筋梗塞
  • 保険期間中に急性心筋梗塞を発病し、初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、労働の制限を必要とする状態が継続したと医師により診断されたときが対象。

    なお「労働の制限が必要」とは、軽い家事等の軽労働や事務等の座業はできるが、それ以上の活動では制限を必要とする状態をいいます。

  • 脳卒中
  • 保険期間中に脳卒中を発病し、その脳卒中により初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、言語障害、運動失調、麻痺等の他覚的な神経学的後遺症が継続したと医師によって診断されたときが対象。

勘違いしてはいけないポイント

大事なポイントは、急性心筋梗塞や脳卒中はかかっただけでは住宅ローンが免除されないという点です。

60日以上も労働の制限が必要だったり後遺症が継続するときは、かなり症状が重いときです。急性心筋梗塞や脳卒中自体が重い病気には違いありませんが、これらの病気にかかっても、必ずしも労働能力を完全に失うわけではありません。

ただし、がんについては悪性新生物の初期から末期まですべて対象にしています。がんは発見が早ければ通院で治療でき、普通に社会復帰できることが珍しくないので、がんとがん以外の保障がアンバランスという印象があります。

まとめると、急性心筋梗塞や脳卒中では本当に困ったときだけが対象で、がんの場合は住宅ローンの返済ができなくなるほど困らなくても住宅ローンの返済が免除されることがあるということです。

住宅ローンの返済が行き詰まるほどの重い症状になる確率は低いので、三大疾病保障付き団信が「必要」かと言われれば疑問ですが、本当に困ったときは役立ってくれると考えられます。

三大疾病保障の保険料は高いのか?

3000万円を30年借りて、上乗せ金利0.2%なら総額90万円

団信に三大疾病保障をつける場合、保険料は金利に0.2~0.3%上乗せされるのが一般的です。

仮に3000万円を0.2%の上乗せで30年間借りた場合、年間の保険料平均は1500万円(毎年の返金残高)×0.2%=3万円です。

これが30年間続くので、3万円×30年=90万円です。金利が0.3%なら135万円です。

コストパフォーマンスでいえば?

総額を聞くと高いと感じるかもしれませんが、コストパフォーマンスで言えばどうでしょうか。

比較のために、アクサダイレクト生命のがん保険(定期タイプ)に30歳から60歳まで加入したとします(入院給付金日額は1万円)。このがん保険は入院給付金とがん診断給付金(100万円)のみの保障です。
参考:アクサダイレクトのがん定期|アクサダイレクト生命

いずれも上皮内新生物を対象に含めているのでやや保障範囲が広いですが、他の商品ではこれ以上条件をそろえることが難しいので、これで試算しました。

・30歳~40歳:月額保険料650円
・40歳~50歳:月額保険料970円
・50歳~60歳:月額保険料1780円
・平均:1133円

保険金額を1500万円にそろえて年間保険料を計算すると、1133円×12カ月×15=20万3940円となります。上皮内新生物も対象ですし、入院給付金があるので単純比較はできませんが、急性心筋梗塞や脳卒中が対象にならないのにこの金額です。

したがって、三大疾病保障の年間保険料平均が3万円(月額2500円)というのは、決して割高という印象はありません。それなら、保証会社に払う保証料のほうがよっぽどムダではないでしょうか……

三大疾病保障つき団信を選ぶときのポイント

商品例

いくつか代表的な三大疾病保障つき団信を紹介しておきますので、各サイトを見て比較してみてください。上乗せ金利以外はそれほど大きな違いがないことがわかるはずです。

3大疾病保障付機構団体信用生命保険(住宅金融支援機構)

3大疾病保障特約付団体信用生命保険(みずほ銀行)

団体信用生命保険「3大疾病保障特約」(ソニー銀行)

3大疾病保障特約付住宅ローン(りそな銀行)

3大疾病団信付ローン(千葉銀行)

重要な違いは「手術も条件になっているか」

なお、1点だけ違う点があります。それは、急性心筋梗塞と脳卒中の免除要件で「手術が入っているかどうか」です。上記の中では住宅金融支援機構以外はすべて対象となっています。

急性心筋梗塞や脳卒中の治療で手術をしたことも対象になっていれば、所定の状態が60日以上継続することだけが条件の商品と比べて保障範囲が広いといえます。

ただ、急性心筋梗塞や脳卒中の治療で常に手術をするとは限りません。むしろ、脳卒中は点滴治療のほうが多いと思われますので、こちらもあらかじめよく知っておいてください。

おわりに

三大疾病保障付き団信は保険料(の総額)が高いという人も多いですが、そもそも保険金額が高いことが原因なので、1円あたりの保険料を考えたら決してそうとは言えません。

病気なったときの治療費の備えとしてこの三大疾病保障に入るのなら、急性心筋梗塞や脳卒中のときは条件を満たさなくて困ることがあるかもしれません。しかし、住宅ローンの場合は返済ができない状態になったときだけ保障してもらえれば良いので、保険料を考えれば問題はないでしょう。

重い病気にかかったけど無事回復し、働いて返済できるのに住宅ローンがまるっとチャラになってラッキー、みたいな結果を得ることが目的の保険ではありませんので注意してください。

また、冒頭に書いたとおりがんだけを保障するがん団信や、七疾病、八疾病を保障する商品もありますし、広く就業不能状態を保障するものもあります。こうした商品と比較して検討するのがおすすめです。