住宅ローンにがん保険(がん団信)は必要か

がんと診断確定されると住宅ローン残高の50%または100%の返済が免除される「がん保障団信」について、その必要性やコストパフォーマンスなどの点を解説します。

FP横山

結論から言えば、役立つことはありますが「必要」とは言えません。

住宅ローンのがん保障団信とは

団信(団体信用生命保険)とは、住宅ローンを組むときに金融機関から加入を求められる保険です。住宅ローンは高額でその返済は長期間にわたるため、債務者が死亡したり高度障害状態になったりすることで返済能力がなくなると、その肩代わりをする人に大きな負担となります。

そのような事態を防ぐため、万が一のときは住宅ローンの返済義務の免除を受けられる保険に加入することが原則となっています。

その保障範囲を広げ、がん(悪性新生物)にかかった時点で住宅ローン残高の50%(100%)相当額の返済を免除するのが「がん保障団信」です。がんの治療をするうえで住宅ローンの負担が減れば精神的な負担も軽くなり、闘病にも良い効果が期待できます。

がん50%保障団信の本質は、がん保険の診断一時金と同じです。がん保険の診断一時金は、がんと診断確定されると50万、100万といったまとまったお金を保険会社から受け取ることができるものです。

がん保障団信とがん診断一時金の違いは金額の大きさです。がん診断一時金なら高くても300万円程度で加入するのが一般的ですが、住宅ローンは数千万円で組むことが多く、免除される金額はがん保険の診断一時金を大きく超えます。

住宅ローンのがん保険(がん団信)は必要か

住宅ローンのがん保険(がん団信)は、結論から言えば必要とは言えません。

なぜなら、がんにかかったからといって、必ずしも住宅ローンの返済能力がなくなるわけではないからです。

がん団信では、悪性新生物と診断確定されるとその時点での住宅ローンの50~100%相当が保険金として支払われ、その返済義務がなくなります。

悪性新生物というと重い病気と感じるかもしれませんが、その進行度によってステージⅠ(初期)からステージ4(末期)まで差があります。ステージⅠなら健康保険が使える治療で治せる確率も高く、通院で治療を受けられることも多いです。

仮にステージが進行してから発見されても、治療がうまくいけばある程度の期間、収入が減ることはあるかもしれません。しかし、住宅ローンを完済するのが困難になるほど労働能力が低下するケースは限られるので、がん団信が「必要」とまでは言えないでしょう。

もちろん、不安だからがん団信を利用したいというのは全く問題ありません。そこは個人の判断となります。

がんにかかる確率

がん保障団信の必要性は、がんにかかる確率と保険料を知れば判断できます。

国立がんセンターが運営するがん情報サービスというサイトのデータによると、年齢別のがん罹患率は以下のとおりです。たとえば、30歳の男性なら40歳までにがんにかかる確率は0.5%、50歳までに2%、60歳までに7%ということです。

現在年齢別がん罹患リスク2011男性

現在年齢別がん罹患リスク22011女性

住宅ローンを返済している世代のがん罹患率は、返済が終わるまでの期間で男性ならおよそ7%程度、女性なら10%程度と考えておけば良いでしょう。この数字を高いとみるか、低いとみるかでがん保障団信の価値は変わります。

保険料に相当するのは上乗せ金利です。商品によっては上乗せ金利がゼロとされているものもありますが、その住宅ローンを利用するかどうかは他の手数料なども含めてトータルで判断することが必要なので、目先の金利だけで判断しないようにしましょう。

保険金支払条件は一般的ながん保険と同じと言って良いです。じぶん銀行のがん保障団信では被保険者のしおりに、住宅ローンが免除される条件について以下のように書いてあります。

責任開始日からその日を含めて90日(免責期間)経過後の保険期間中に所定の悪性新生物(がん)に罹患したと医師によって病理組織学的所見(生検)により診断確定されたとき

免責期間90日というのはどのがん保険にもあります。また、生検もがんと診断確定するうえで必ず行われるので、この定義に一般的ながん保険との違いはありません。

住宅ローンの返済が免除されるのは「悪性新生物」

がん保険に加入している人なら知っているでしょうが、ここでいう「がん」とは悪性新生物のことです。そのため上皮内新生物は対象になりません。

上皮内新生物とは、がん細胞が臓器の表面をおおう上皮内にとどまっているものを指します。がん細胞が上皮の下部にある基底膜という組織を破り、深層に広がると悪性新生物となりますが、上皮内新生物は基本的に手術でとることができ、転移がないと考えられているものです。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
参考:知っておきたいがんの基礎知識|がん情報サービス

がんに関連した話をするときは、上皮内新生物を含めて広い意味で「がん」と言っているケースと悪性新生物のみを指して「がん」と言っているケースがあるので注意してください。がん保険では悪性新生物のみを保障するものと両方を保障するものがあります。

がん検診に注意!

がんが見つかると高額な住宅ローンが免除されるので、健康管理も兼ねて一石二鳥と考えてがん検診に通う回数を増やす人がいるかもしれません。しかし、がん検診は絶対ではありませんので、いたずらに検診を受ける回数を増やすのはおすすめしません。

がんではないのにがんと診断されることを「偽陽性」、がんなのにがんではないと診断されることを「偽陰性」といいます。過剰に検診を受けてがんではないのにがんと診断されると、不要な治療を受けて健康を損なうこともあるのです。そのため、がん検診はその有効性を確認してから受けましょう。

厚労省研究班と国立がん研究センターによるがん検診有効性評価ガイドラインでは、主要ながん検診とその有効性についてのデータを公開しています。以下の資料の5ページ・6ページをご覧ください。なお乳がんの視触診(単独法)は、死亡率低減の効果が認められないため推奨されていません。
参考:がん検診における不利益|厚生労働省

データは日々、変わっていきます。できれば検診を受けようと考えた時点で最新の情報を入手し、検診を受けるかどうかを判断しましょう。

各社商品の違い

以下で紹介する3社の住宅ローンに付帯する団信は、いずれもクレディ・アグリコル生命が提供する以下の商品です。
参考:住宅ローンの保険|クレディ・アグリコル生命

その提供の形は各社で少し違っており、カスタマイズされています。見せ方が違うだけで、最終的には同じ保険会社が引き受けているものだということを知っておいてください。

じぶん銀行

じぶん銀行では、「がん50%保障団信」と「がん100%保障団信」の2種類があります。
参考:住宅ローン|じぶん銀行

がん100%保障団信は年0.2%の金利が上乗せとなりますが、がん50%保障団信では上乗せはありません。

なおじぶん銀行では「11疾病保障団信」もあります。年0.3%の上乗せで、悪性新生物のほかに以下の病気が対象となります。

糖尿病、高血圧性疾患、腎疾患、肝疾患、慢性膵炎、脳血管疾患、心疾患、大動脈瘤および解離、上皮内新生物、皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん

悪性新生物については先述したとおり「責任開始日からその日を含めて90日経過後の保険期間中にがんと診断確定された場合」が対象です。

その他の病気については治療を目的とした入院が継続して180日以上となった場合が対象です。正直なところ、この要件を満たす確率はかなり低いでしょう。可能性があるとしたら脳血管疾患でリハビリ期間も含めた場合ですが、リハビリは治療ではないので対象外とされる可能性が高いです。そのため、11疾病保障団信はあまりおすすめできません。

ARUHI

住宅ローン専門の金融機関であるARUHIでは、「ARUHI スーパーフラット」「ARUHI変動S」にて「がん団信(がん50%保障プラン)」と「がん団信プラス(がん100%保障プラン)」を提供しています。
参考:ARUHI 団体信用生命保険 商品概要|ARUHI

がん団信(がん50%保障プラン)では年0.05%の金利が上乗せされ、がん団信プラス(がん100%保障プラン)では0.15%が上乗せされます。

ホームページに約款が見当たらないので確認できませんが、がんの範囲などについてはじぶん銀行と同じと考えられます。

なお、ARUHIでは「生活習慣病団信」もあります。こちらはがん保険や医療保険のような保障がついていますが、基本的に住宅ローンの返済までしか保障されないので、こうした保障を得たいなら専用の保険に加入するほうが良いでしょう。

ソニー銀行

ソニー銀行では、「がん50%保障特約付き団信」と「がん100%保障特約付き団信」の2つがあります。
参考:住宅ローンにおける疾病保障特約付き団体信用生命保険の取り扱いについて|MONEYKit

ソニー銀行がこれらの取扱を始めるのは2018年10月の予定です。「がん50%保障特約付き団信」は上乗せ金利はありませんが、「がん100%保障特約付き団信」は0.15%の上乗せがあります。商品の内容は上記2社おおよそ同じと考えて良いでしょう。

なお、このほか「生活習慣病入院保障特約付き団信」と「3大疾病保障特約付き団信」も取り扱われる予定です。一般的ながん保険と同じような保障になると仮定すると、3大疾病保障特約付き団信は条件次第で検討する価値があるかもしれませんが、生活習慣病入院保障特約付き団信はおすすめできる商品になる可能性は低いと考えています。

住宅ローンのトータルな見直しとして行えば効果大

十分に低い金利で住宅ローンを借りていると思っていても、まだ返済額を削減する余地があるかもしれないというのが金利の低い今の状況です。

住宅ローンの一括審査サービスを提供するモゲチェックプラザによれば、2000年~2010年に借入を行い、金利が1%以上、元本が1,500万円以上残っていると削減のメリットが期待できるとのことです。
参考:住宅ローンの借り換えはモゲチェック・プラザ

全国にある700の金融機関で一括審査ができ、変動金利は0.41%~0.575%の間で提案されます。以下のようなスライダーを使ってどのくらいメリットが見込めるが簡単にわかりますので、興味があればモゲチェックプラザのサイトで調べてみてください(以下はキャプチャ画像なので動かせません)。

おわりに

じぶん銀行の100%がん保障団信は0.2%の金利が上乗せされるので、住宅ローン残高が2,000万円なら利息は年間で4万円です。12で割ればおよそ3,333円ですが、これを保険料相当額とみれば良いでしょう。同様に住宅ローン残高が3,000万円なら5,000円、4,000万円なら6,666円になります。

50%団信なら上乗せ金利はゼロですが、この半額を他のところで負担していると考えるべきです。

がん団信は必要とまでは言えませんが、コストパフォーマンスとしては決して悪くないといえます。住宅ローンのトータルな見直しと合わせて検討してみる価値はあるでしょう。