1週間の入院にかかる費用の目安を計算する方法

生命保険文化センターのデータによると、1日あたりの医療費の自己負担額は19,835円となっています(平成28年度調査)。

この数字を用いて単純計算すると1週間の入院にかかる費用は約14万円、1ヶ月なら約60万円ということになりますが、こうした計算の仕方は間違っています。

この記事では1週間の入院にかかる費用の計算方法について解説します。

FP横山

1日あたりの入院費用のデータはよく見かけますが、役立ちません……

この記事の前提条件

この記事で取り上げる入院費は、以下の2つの条件を満たしているものに限ります。

  • 入院して適切な治療をすれば治る普通の病気
  • 治療法は健康保険が使えるもののみ

「がん」はここには含めません。なぜなら、がんは通院で時間をかけて治療することが増えましたし、発見されたときの進行度によって治療費のかかり方がまったく違うことがあるからです。

たとえば乳がんで1週間入院した場合、その後もさまざまな費用がかかります。治療が終わったあと5年くらいホルモン療法が続くことがありますし、治療のために乳房切除をして再建を希望する場合、自由診療なら100万円くらいの費用がかかることもあります。

そのためがんを含めて考えてしまうと、計算して出てきた結果が役立たないものになってしまうからです。あくまで盲腸や腸閉塞のような、ごく一般的な病気を対象としている点をご承知おきください。

医療費の計算方法

1週間の入院費用を計算するうえでは、入院したときにかかる費用を次のようにわけてください。

  • 健康保険が使えるもの(入院基本料や手術料、検査料など診療報酬点数がつくもの)
  • 健康保険が使えないもの
    1. 食事代
    2. 差額ベッド代
    3. その他の雑費(病院以外のところに支払った費用も含める)

健康保険が使えるもの

70歳未満(かつ小学生以上)の人が医療機関で治療を受ける場合、窓口で負担する割合は医療機関で生じた医療費の3割です。

入院した場合は医療費が高額になることが多いため、医療費が高額なら患者が負担する金額も高額になりますが、これを一定の水準におさえる「高額療養費制度」というものがあります。

高額療養費制度を使うと、たとえば医療機関で100万円の医療費が発生していても自己負担額は3割の30万円ではなく、それよりもかなり安い金額になります。年収が約370万円から770万円程度の世帯の場合、自己負担額は次のように計算します。

自己負担額の上限は以下のサイト(4ページ~5ページ)に掲載されています。年齢が70歳以上と70歳未満で計算方法が違い、また所得によっても違ってきます。
参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省

図で緑色に塗られた箇所が「高額療養費」と呼ばれる部分で、ここが支給されて最終的な負担額が87,430円になるという意味です。上記サイトで自身の自己負担額の計算方法について、いざというときにあわてないようにするため、あらかじめ調べておいてください。

こうした計算を行うため、入院したときの費用は日数に比例して単純に増えていくわけではないのです。

健康保険が使えないもの

入院したときにかかる費用のうち健康保険が使えないものは、主に次の3つにわけられます。こちらは入院日数に比例して金額が増えます。

食事代

入院したときの食事代は健康保険が使えません。1食あたり460円(一般)と決まっています。住民税非課税世帯なら100円~210円です。
参考:平成28年4月1日から入院時の食費の負担額が変わり、新たに調理費の負担が追加されます|厚生労働省

差額ベッド代

差額ベッド代は、大部屋よりも環境の良い部屋(特別の療養環境といいます)を自らの意思で選んだ場合にかかる費用です。これも健康保険が使えません。なお個室とは限らず最大で4人部屋まであります。

差額ベッド代は約6割が5,400円(1日あたり)以下です。4人部屋なら約9割です。このデータは以下のサイト(厚生労働省)の3ページ目に掲載されています。
参考:主な選定療養に係る報告状況|厚生労働省

その他

以上のほか、たとえばコインランドリーを利用した場合の費用や、時間を潰すための娯楽にかかる費用、家族の見舞いにかかる費用などがあります。

1週間の入院費用の目安を計算する方法

目安は10万円~15万円程度

仮に30歳で年収が500万円の場合、自己負担限度額の計算方法は以下のとおりです。

80,100円+(医療費-267,000円)×1%

(医療費-267,000円)×1%の部分ですが、ここはあまり影響しませんのでアバウトに決めてください。仮に医療費が300,000円なら80,430円、3,000,000円でも107,430円です。医療費が300万円もかかることはまれですから、だいたい9万円くらいと見ておけば良いです。

その他の費用については入院日数に比例してかかります。そのため、1週間でかかる費用の目安は以下の計算式で求めることができます。

自己負担限度額+(食事代+差額ベッド代+その他の費用)×7日

健康保険の使えない費用が1日あたり3,000円なら90,000円+3,000円×7日=111,000円、差額ベッド代に4,000円かけたとして1日あたり7,000円なら90,000円+7,000円×7日=139,000円となります。

以上から、年収がごく一般的な家庭なら10万円~15万円程度の備えがあれば、普通の病気で入院する場合の備えとしては十分なのです。

月をまたぐと入院費が変わる

ただし、入院日数が同じでも月をまたぐと計算結果が変わります。なぜなら、高額療養費の計算は月単位で行うからです。

医療費が100万円の場合における自己負担額は、先述の例であれば月をまたがなければ87,430円ですが、仮に月をまたぎ、最初の月に70万円、翌月が30万円とすると計算結果は次のようになります。

入院月:80,100円+(700,000円-267,000円)×1%=84,430円
翌月:80,100円+(300,000円-267,000円)×1%=80,430円
合計:164,860円

この金額に健康保険が使えない費用が加算されます。入院が月をまたぎそうな場合は、入院する医療機関に相談してこれを回避できないか検討してください。

差額ベッド代について必ず知っておいてほしいこと

入院費用を少しでもおさえたい場合は、なるべく大部屋を利用すれば良いと考えるでしょう。しかし、大部屋に空きがないことを理由に差額ベッド代のかかる部屋の利用を求められることがあります。

このように病院の都合で差額ベッド代のかかる部屋を利用する場合や治療上必要な場合などは、患者は差額ベッド代を負担しなくて良いのです。

ただ現実はさも患者が負担するのが当たり前のように言われ、知らずに同意書にサインしてしまうことがあるようです。なかなか断りにくいかと思いますが、そこはうまく対応してください。サインをしてしまうと後で覆すのが難しいので、同意書に安易にサインしないことが大事です。

以下のサイトに詳しい説明がありますのでご覧ください。
参考:差額ベッド(特別療養環境室)について|埼玉県公式サイト

また、以下の記事も参考にしてください。
参考:差額ベッド料 厚労省新通知「病室満室」は請求不可日曜版報道に反響|しんぶん赤旗

病院での支払いをおさえるには

先述の例では健康保険が使える分の自己負担額が87,430円ですが、入院するときに何もしなければ窓口でいったん30万円を支払い、あとで健康保険に対して請求することで差額の212,570円が戻ってくることになります。これが原則です。

これを最初から87,430円の支払いで済ませたい場合は、入院するときに「限度額適用認定証」を入手して病院に提示することが必要です。画像が用意できませんので、どんなものか見たい場合は以下のページをご覧ください。
参考:限度額適用認定証|Google検索結果

限度額適用認定証は、加入している健康保険の窓口に対して請求すれば発行してもらうことができます。

おわりに

1日あたりの入院費用を大きく左右するのは差額ベッド代です。差額ベッド代を支払う必要があるのは原則として、自らの意思で利用した場合のみだということをしっかり覚えておいてください。

ただ現実には、本当は払わなくて良いときに支払いを求められた場合、断りにくいこともあるはずです。そのようなことも想定し、医療費の備えはしっかりしておきましょう。