フリーランスは国民年金基金とiDeCo、どちらを利用すべきか検討してみた

フリーランスは老後にもらえる年金が会社員や公務員と比べて少なくなるのが普通なので、不足が予想される分については自分で何とかしないといけません。

そのとき、候補にあがるのが国民年金基金とiDeCo(個人型確定拠出年金)ですが、違いがやや分かりにくいので、どちらを選んだら良いか迷うのではないでしょうか。

そこで、フリーランスである私がこれらの違いについて解説し、どちらを選んだら良いか判断するための材料を提供します。

FP横山

結論から言うと、私は国民年金基金がおすすめだと思っています。

国の年金制度

国の年金制度は一般的に、以下のように図解されます。

会社員や公務員であれば厚生年金や企業年金がありますが、フリーランスは何もしないでいると国民年金のみなので、老後の年金はとても少なくなってしまいます。

2019年4月現在、国民年金は満額で78万100円です。月にすると約6万5000円です。

会社員や公務員の期間があればもう少し金額は増えますが、それでも生活費としては十分とは言えない金額になることが多いと考えられます。そこで、国民年金基金やiDeCoを利用して不足分を補うのが有力な方法の1つになります。

なお両者は、掛金の合計で月6万8000円以内(国民年金の第1号被保険者)であれば併用できます。

国民年金基金とiDeCoの違い

国民年金基金とiDeCoの違いを表にまとめてみました。

国民年金基金iDeCo(個人型確定拠出年金)
公式サイト国民年金基金公式サイトiDeCo公式サイト
掛金の取り扱い全額所得控除全額所得控除
途中解約できないできない
最低拠出額6370円~(加入年齢により異なる)5000円
確定給付・確定拠出の別確定給付確定拠出
給付のタイプ終身年金・確定年金有期年金
受取開始年齢60歳または65歳から60歳から
運用方法おまかせ自分で決める
運用益の扱い非課税
口座管理手数料なしあり
受取時の税金公的年金等(雑所得)退職所得または公的年金等(雑所得)

以下、両者の違いを詳しく解説します。

掛金が所得控除になる

iDeCoでも国民年金基金でもメリットとして強調されていますが、掛金として支払う金額はいずれも全額が所得控除の対象となります。

たとえば月に2万円を掛金として支払うと年間で24万円になります。所得税と住民税の税率をそれぞれ10%とすると、合計で24万円×20%=4万8000円の節税効果があります。これは大きいですよね。

30歳で加入し、掛金を60歳まで払い続けた場合は24万円×30年=720万円を支払うことになりますが、このうち20%が節税効果として返ってくるなら実質の掛金は約8割の576万円となります。この節税効果の高さは国の制度ならではですね。

最低拠出額は?

iDeCoと国民年金基金は毎月、以下の金額から始められます。

  • iDeCo:5000円
  • 国民年金基金:6370円~(20歳0月男性)7940円~(20歳0月女性)

iDeCoは毎月5000円以上、1000円単位で掛金を決めることができます。また、毎月定額ではなく1年単位で計画を立てて掛金を決める「年単位拠出」という方法もあります。

国民年金基金の場合は最低拠出額が年齢によって変わります。上記の金額はあくまで加入時の年齢が20歳0月の場合なので、年齢が上がれば金額も高くなります。

国民年金基金は最低1口から加入でき、1口目は必ず終身年金にする必要があります。最低拠出額を知りたい場合は公式サイトのこちらのページで確認してください。

注意
20歳「0月」とは、20歳の誕生月に加入する場合という意味です。4月生まれの人が6月に加入するなら20歳2月となります。

途中解約・休止はできる?

国民年金基金はいったん始めると、加入資格を喪失しない限り自分の意思でやめることができません。これは大きなデメリットです。

2口以上の加入をしている場合は減口(口数を減らすこと)ができるので、1口まで減らすことは可能ですが、それ以下にはできません。

中断は可能なようですが、未納期間が生じればその分、もらえる年金は減ることになります(こちらのページに説明がありますが、あえてはっきりと「中断できる」と書かず、ぼかしているように見えます)。

iDeCoも途中でやめることはできませんが、掛金の積立を停止するのはいつでもできます。いずれもいったん支払ったお金を引き出すことができないという点では同じです。

確定給付なのか、確定拠出なのか

iDeCoと国民年金基金の給付のタイプを説明するときは、以下の言葉がよく使われます。

  • iDeCo:確定拠出型
  • 国民年金基金:確定給付型

iDeCoの場合、年金として受け取る金額は運用の結果次第で変わります。そのため、あらかじめ毎月いくらと決められているわけではありません。

しかし、国民年金基金の場合は加入した口数に応じて決められています。そのため、加入した時点でいくら受け取ることができるかがわかります。

終身年金なのか、確定年金なのか

ここは大事なポイントなのですが、国民年金基金は以下の2つのタイプを選ぶことができます。

  • 終身年金
  • 確定年金

終身年金は、受取が始まってから死亡するまでずっと受け取れるタイプの年金です。これに対して確定年金とは、もらえる期間が決まっているタイプの年金です。

人はいつまで生きているかわかりませんので、ずっともらえるタイプのほうが役立つことは間違いありません。そのため、国民年金基金に加入するなら終身年金を選ぶのがおすすめです。2口目以降は終身年金と確定年金の好きなほうから選べますが、2口目以降も終身年金を選ぶほうが良いでしょう。

iDeCoは60歳までの期間で積み立てたお金+運用益を、一時金として受け取るか年金として受け取るか選びます(併用もできます)。

年金として受け取る場合は5年から20年の間(1年刻みで選択)で受け取ることになるので、終身年金ではありません。あくまでも、積み立てたお金+運用益を自ら決めた期間に配分して受け取ってるにすぎません。

年金の受取開始年齢は?

iDeCoの年金受取開始年齢は、原則として60歳からです。ただし掛金の拠出期間が10年に満たない場合は60歳から受け取れません。

国民年金基金は終身年金が65歳からで、確定年金のうちⅠ型・Ⅱ型は65歳から、Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型は60歳から受取開始となります。

年金の受け取り開始年齢と、受け取れる期間を図解すると以下のとおりです。このように図にしてみると、終身年金のメリットが際立つ印象があります。

運用方法は誰が決める?

iDeCoは自分で運用方法を選ぶ必要があります。それに対し、国民年金基金は掛金を支払ってしまえば運用方法を気にする必要はありません。

iDeCoは運用益が非課税になるメリットが強調されますが、国民年金基金ならそもそも自身で運用する必要がないので非課税なのと同じです。

運用に自信があるならiDeCoを選んだほうが有利になるでしょう。逆に、運用に自信がなかったり、運用するのが面倒に感じたりする場合は国民年金基金のほうが合っていると言えます。

口座管理手数料

iDeCoは以下のようにさまざまな口座管理手数料がかかります。

  • 加入時:2777円
  • 運用期間中:毎月64~600円程度
  • 年金受取時:毎回432円
  • 口座を移すとき:0~4320円
  • 信託報酬:年間0.15~2.0%程度

加入時の手数料と口座を移管するときの手数料はそのときだけなので良いとして、他は常にかかるところがポイントです。国民年金基金ならこうしたお金はかかりません。

特に運用期間中の手数料や投資信託で運用するときの信託報酬は大事なので、なるべく安いものを選ぶべきでしょう。

受取時の税金

年金の受け取り方は、国民年金基金は年金形式のみですが、iDeCoは年金形式、一時金、年金と一時期の併用の3つから選べます。

年金として受け取る場合は「公的年金等」となり、雑所得として計算されます。公的年金等控除が使えるので、年金額が少なければ税金はかかりません。

iDeCoで一時金として受け取る場合は退職所得として扱われます。会社員がiDeCoで運用したお金を受け取るときは会社の退職金と合わせて計算されるので課税される可能性がありますが、フリーランスはそれがありませんので、掛金が高額でなければ税金を気にする必要はないでしょう。

退職所得控除額は以下の計算式で求められ、一時金から控除されます。そして、その金額に2分の1をかけた金額が退職所得になります。

  • 20年以下の場合:40万円×年数
  • 20年を超える場合:800万円+70万円×(年数-20年)

仮に月3万円で30年間、iDeCoを利用した場合の積立金額は3万円×12カ月×30年=1080万円です。

この場合、退職所得控除額は800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円なので、よほど運用益が出ていない限り退職所得はゼロになります。

国民年金基金とiDeCo、どちらを選ぶべきか。私の見解

以上の比較を通じて、どちらに加入したいと感じたでしょうか。

結論から言うと、私は国民年金基金の終身年金タイプ(保証期間なし)です。

iDeCoを選ばない理由は以下のとおりです。

  • 運用がうまくいかなければ、元本が減ってしまうこともある
  • 口座管理手数料が高い
  • もらえる年金は所詮、自分が積み立てたお金+運用益にすぎない

一方、国民年金基金を選ぶ理由は以下のとおりです。

  • 終身年金を選べば、長生きしたときの生活費の不足に備えられる
  • あらかじめ、もらえる金額がわかっている
  • 手間がかからない。掛金を支払うだけ。

最も大きいのは「死亡するまで年金が受け取れる」という点です。これは大きいですね。

民間の保険会社の個人年金保険でも終身年金タイプを選べる商品がありますが、破綻リスクを考えるとやはり国の年金制度である国民年金基金のほうが安心です。

国民年金基金、いくら払うといくらもらえる?

仮に30歳0月の男性が、65歳から月に5万円の終身年金(保証期間なし)を受け取りたいと考えたとします。

公式サイトの掛金月額表を見ると、30歳0月の男性は1口目が2万円、2口目以降が1万円です。そのため、月5万円を受け取りたいなら4口加入すれば良いことになります。

掛金の総額は以下のとおりです(保証期間なしのタイプはB型)。

  • 1口目:9650円
  • 2口目~4口目:4825円×3=1万4475円
  • 合計:2万4125円

60歳までで支払う掛金の総額は、2万4125円×12カ月×30年=868万5000円です。

このうち、所得控除の効果で20%の節税効果があると仮定すると、868万5000円×80%で実質約700万円の掛金を支払うことになります。

65歳になれば月に5万円ずつ受け取れるので年間で60万円、12年間受け取れば720万円なので、72歳頃に元が取れる計算です。これなら十分、割に合いますね。

ただ、加入年齢が遅くなればシビアな数値になります。

仮に45歳の男性が月に3万円の終身年金(保証期間なし)を受け取りたいと考えたとしましょう。

45歳の場合は1口目が1万円、2口目以降が5000円なので、3万円を受け取るためには5口の加入が必要です。

この場合の掛金は11,380円+5690円×4口=3万4140円となります。60歳までの支払総額は614万5200円で、所得控除を考慮して約500万円となります。このくらいの金額になると微妙ですね。

おわりに

国民年金基金やiDeCoが有利な制度であることは間違いありません。

国民年金基金にせよiDeCoにせよ、いったん積み立てたお金は引き出すことができないということが最大のデメリットです。そのため、利用するのであれば無理のない金額で始めるのがおすすめです。

国民年金は破綻するとずっと言われ続けていますが、国民年金が破綻するときは国民年金や国民年金基金だけでなく、もっと大きな問題が起きるはずです。そのため、世間の声にはあまり流されないほうが良いのではないかと私は考えています。