「公務員を辞めたい」は甘いのか、元公務員ライターの新美友那さんに聞いてみた

難関の試験に合格して憧れの公務員になったものの、事前に思い描いていたのとは違った……と悩んでいる方は決して珍しくないようです。

某市役所で5年ほど公務員として勤務した経験があり、現在は退職してフリーライターとして活躍している新美友那さんもその1人です。

そこで今回は、新美さんに公務員という職場の実態や公務員を辞めたいと思った理由、現在の心境などについてお聞きました。

プロフィール
新美 友那(にいみ・ともな)
ライター・編集者。講師やイベント登壇も行っています。法政大学卒業後、市役所に5年ほど勤務し、田舎フリーランス養成講座を受講・退職。現在は独立3年目で、結婚・日用雑貨・アニメ等の記事を書いています。
Twitter:https://twitter.com/inaka_free213
blog:https://niimitomona.com/

「あたたかい家庭」を作るはずが……

—– そもそも新美さんが公務員を志したきっかけは何でしたか。

私が公務員になろうと思った理由は「あたたかい家庭を作りたい」ということでした。公務員なら定時で帰宅したり、有給休暇や育児休暇をしっかり取得したりすることが民間企業と比べて容易ではないかと想像していたので、理想のワークライフバランスを実現するのに適していると考えていたからです。

—– 実際に働き始めて、想像していたとおりでしたか。

いえ……入庁してすぐに配属されたのがスポーツ関係の部署で、そこでは長時間の残業や休日出勤が当たり前でした。定時で帰宅するどころか市役所を出るのが夜12時くらいになることも珍しくなく、最長で月に100時間を超える残業をしていたときもありました。

—– その状況はいつまで続きましたか。

スポーツ関係の部署と言っても一時的なイベントに関するものだったので、そのイベントが終わるまでの約1年半で、他の部署に異動することになりました。次の部署は文化財を扱うところだったのですが、ここではそれまでと違い、時間外労働として土日に出勤することはほとんどなく、だいぶ楽になりました。

—– それなら、「あたたかい家庭」を作れる環境になったわけですね。

そうですね。しかし、この部署で勤務できたのは半年弱で、すぐにまた異動になりました。異動先は経理関係の部署で、伝票のチェックなどが主な仕事だったのですが、私はこうした作業があまり得意ではなかったので評価もかなり下がってしまいました。この部署は、決算期を除けば定時に帰れることが多かったのですが、少しずつ精神的に追い込まれることになりました。

公務員(市役所)は、ブラックな労働環境なのか

—– ところで、総務省が公表している「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果(概要)Ⅰ」というレポートによると、平成26年度および平成27年度における地方公務員(※)全体の残業時間は月平均で13.2時間となっています。これくらいなら決してブラックな職場というわけではないと思いますが、どう感じますか。

※調査対象団体は都道府県、政令指定都市、県庁所在市(政令指定都市を除く、東京都にあっては新宿区)、対象職員は知事部局・市区長部局の一般職に属する任期の定めのない常勤職員(管理職を除く)。ここには市役所が含まれていないので参考値となります。

うーん、なるほど。確かにこういう部署もありますが……私の職場は1,000人以上の職員がいたのでさまざまな部署がありましたが、もっと長い時間、残業している人はたくさんいたと思います。

—– このような結果になった理由についてはわかりませんが、少なくとも新美さんの実感とは一致しないということですね。

はい。もちろん定時で帰宅できる人もいましたが、定時で帰れている人のほうが少なかったというのが私の実感です。他の自治体については詳しく知らないので何とも言えませんが。

—– 残業を減らす取り組みは、市役所で何か行なわれていましたか。

毎週水曜日が「ノー残業デー」に指定されていました。でも事前に申請すれば残業できたので、結局、業務量の多い部署は残業をしていたと思います。

—– 新美さんが公務員を辞めることを考えたきっかけは、労働時間の長さだけが原因というわけではなかったわけですよね。

はい。月100時間もの残業が辛いのは当たり前ですが、税金が財源ということで、『間違わない』ことが評価される職場だったために自分の適性と合わず悩み、結果として辞めることにつながりました。

—– 公務員で休職する人も多いらしいですね。一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会が公表しているデータによると、精神及び行動の障害(うつ病などの精神疾患)で長期間、仕事を休む人の数が平成14年度から平成29年度にかけて約3倍に伸びているようです。

市役所は長期間、休職する人が多かったと思います。そういうウワサを聞くことは珍しくなかったですね。

田舎フリーランス養成講座に出会って迷いが消えた

(会場である「まるも」の最寄り駅の内房線・浜金谷駅)

—– 公務員を辞めたいと思い始めてから実際に辞めるまで、どのくらいの時間がかかりましたか。

公務員を辞めたいという心境になったものの、公務員から民間企業への転職は難しいという話も聞いていましたし、他の自治体の公務員になってもまた同じではないかと思ったので、3年ほどずっと悩んでいました。

—– 公務員を辞めるあとおしをしてくれたのが「田舎フリーランス養成講座」(通称:いなフリ)だったわけですよね。

はい、ネットを何気なく見ていたところ、株式会社Ponnuf(ポンヌフ)が開催している「田舎フリーランス養成講座」を見つけました。この講座はフリーランスという生き方に興味のある人に対して1カ月間、必要なスキルを身につけるための講座と生活する場所を提供してくれるものです。

この講座を見つけてすぐ話を聞きに行ったのですが、代表である山口拓也さんが2時間ほど相談に乗ってくださり、どのくらい働けばどのくらいの収入になるのかなど具体的な話をお聞きすることができました。また、山口さんは同い年だったこともあり、この人の半分くらい結果を出せれば普通の生活はできるんじゃないかと思ったこともあって、すぐに申込みを決めました。

—– 「田舎フリーランス養成講座」では、どのような講座を受講できるのですか。

田舎フリーランス養成講座で教わることができるのはライティングやweb制作などに加え、ランサーズなどのクラウドソーシングを利用して仕事を得るノウハウです。週末に行われる面談で希望を確認し、全員の希望を考慮して次の週のカリキュラムを組む仕組みになっています。

—– 同期の人たちとは、今もつながりがありますか。

はい。やはり1カ月もの時間を一緒に過ごすので、同期の人たちとはかなり親しくなります。1~2日程度のセミナーではその後に連絡を取り合うことはあまりありませんが、田舎フリーランス養成講座の同期の人たちとは今でもやりとりがあります。フリーランスは基本的に1人で仕事をすることが多いですが、人とのつながりも持っておくことが大事なので、それがとてもありがたいと感じています。

—– これからフリーランスになることを考えている人に、ライターという仕事をすすめますか。

はい、スキルなしでも始められてすぐお金になるというのが魅力ですね。プログラミングなど他の仕事をしたい人でも、とりあえずライターの仕事で当面の生活費を稼ぎながら準備するということもできます。

—– ずばり、フリーランスになって良かったですか。

はい。想像以上に「生きていける職業」なんだな、というのが実感です。フリーランスというと仕事がなくて大変というイメージがあったのですが、今はクラウドソーシングがありますし、実績ができてくれば他のメディアで仕事をすることも可能になります。

—– 新美さんのライターとしての仕事は、Webライティングと取材ライティングのどちらが多いですか。

Webライティングの仕事(ネットによるリサーチ中心で書ける記事)が月に15本程度、取材ライティングの仕事が月に2~3本程度です。あとは編集(ライターへの指示や記事のチェックなど)の仕事ですね。

—– 今、取材してみたい人はいますか。

今、取材してみたいのは作家である有川浩(ありかわひろ)さんです。取材ライティングの仕事は取材相手に興味が持てるかどうかが良い記事を書けるかどうかに直結するので、取材の仕事は興味が持てる案件を積極的にお請けするようにしています。

公務員を辞めることが甘いかどうかなんて、他人にとやかく言われることではない

—– 最後になりますが、公務員を辞めるのは甘い考えではないかと悩んでいる人が目の前にいるとしたら、どのようにアドバイスしますか。

公務員は仕事がラクというイメージで見られがちですが、実際は職場によって違いがありますし、個人個人でもどんな仕事をしているのかということは違います。仕事が辛くて体調を崩してしまうくらいなら、公務員であるか否かにかかわらず辞めるという選択肢は検討していいのではないでしょうか。福利厚生がいいからといって幸せに暮らせるとは限らないですし、その点をよく考えて決めたのであれば、周囲が何と言おうと辞めるのは甘いのではないかと考える必要はないと思います。

—– 新美さんは、公務員を辞めたいと思っている人の相談に乗っていますよね。

はい、有料にはなりますが、当時の私のように公務員を辞めたいと悩んでいる方々やフリーランスという生き方に興味のある人の相談に乗っています。興味があれば、私のブログ「実績・仕事依頼について」のページからお申し込みいただければと思います。

—– ありがとうございました。