医療保険の入院給付金はいくらにすべき? 5000円? 1万円?

医療保険に加入するとき、入院した日数に応じて受け取れる入院給付金をいくらにするか決めなければいけませんが、これは意外と難しいです。

そこで、この記事では入院給付金をいくらにすべきかなのか、論理的に答えを出してみます。

FP横山

入院給付金の金額は、医療保険に加入するうえで難しいテーマの1つです。

入院給付金、みんなはどうしてる?

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生命保険文化センターが公表している「平成28年度 生活保障に関する調査」によると、入院給付金の金額については以下のような傾向になっています。

5000円~7000円と1万円~1万5000円未満が一番多いですが、実際は5000円と1万円にしている人が大半であると考えられます。

入院するといくらかかるのか?

入院するとかかる費用についてはまず、以下の3つにわけて考えましょう。

・健康保険が使える治療費
・諸雑費
・差額ベッド代

このようにわけて考えるとわかりやすくなります!

健康保険が使える治療費

軽い病気の場合

風邪などの軽い病気で病院へ行くと、病院で発生した医療費の3割を支払いますよね。

そのため、仮に窓口で3000円を請求されたとしたら、病院で発生している医療費は3000円÷0.3=1万円ということです。差額の7000円は病院が後日、健康保険の運営者に対して請求しているのです。

入院するような重い病気の場合

では、入院して医療費がたとえば100万円かかった場合はどうなるのでしょうか。

風邪をひいたときと同じように考えれば、自己負担額は100万円×3割=30万円ですよね。

しかし、医療費が高額になったときは患者の負担をおさえる仕組みがあります。これを高額療養費制度と言います。

高額療養費制度を利用した場合の負担額は、以下のように所得によって変わります(70歳未満の場合)。

そのため、同じように100万円の医療費がかかる治療だったとしても、負担額は以下のように大きく違うのです。

・区分ア:252,600円+(1,000,000円-842,000円)×1%=254,180円
・区分イ:167,400円+(1,000,000円-558,000円)×1%=171,820円
・区分ウ:80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
・区分エ:57,600円
・区分オ:35,400円

区分ウの場合は以下の図の青い部分だけ負担しています。3割よりだいぶ少ないですよね。

この計算は、入院日数に比例しないのがポイントです。100万円の治療費が3日の入院で発生しようが10日の入院で発生しようが変わりません。

区分ウの場合、1日あたりの医療費は以下のようになります。

・100万円の医療費が3日で発生した場合 → 87,430円÷3日≒29,143円/1日
・100万円の医療費が20日で発生した場合 → 87,430円÷20日≒4,371円/1日

なお、高額療養費制度については以下の記事で詳しく書いていますので、そちらをご覧ください。
医療保険やがん保険の加入を検討する前に、必ず知っておくべき高額療養費制度について

1日あたりの医療費が入院日数に比例しないのが、入院給付金日額を決めるにあたってややこしくなる理由です。

諸雑費

入院すると、治療費以外にもさまざまなお金がかかります。たとえば以下のようなものです。

・衣類の費用
・通信費
・新聞・テレビ
・見舞いに来る家族の交通費 など

こうした費用には個人差がありますが、交通事故で入院した場合の賠償金請求では1日あたり1400円~1600円とされています。

そのため、1日あたり1500円程度かかると考えておけば良いでしょう。

差額ベッド代

差額ベッド代の相場

差額ベッド代とは、一定の条件を備える部屋を利用するとかかる費用のことです。個室とは限らず、最大で4人部屋まであります。

差額ベッド代については、厚生労働省による調査結果があります。おおむね、5000円程度以内で約6割が収まっています。


引用元:主な選定療養に係る報告状況|厚生労働省

ただ、これではピンと来ないのではないかと思うので、みなさんの近所にある総合病院のホームページをチェックしてみてください。いざ、入院するとなったらここになるんじゃないかと思うところです。

たとえば、千葉市の松戸市立総合医療センターでは、差額ベッド代のかかる部屋はA室(2万円/日)、B室(8000円/日)の2種類のみです。
参考:入院のご案内|松戸市立総合医療センター

このように、もし入院するとなったら自分はどこの病院に行くだろうかというのを考え、その病院にどんな部屋があるが調べておくと、データを見るよりも実感がわきます。

地域によって相場がかなり違います!

差額ベッド代は希望した場合のみ払えば良い

差額ベッド代のかかる部屋を利用した場合でも、その費用を支払う必要があるのは自分が希望したときだけです。これは大事なので、必ず覚えておきましょう。

以下のように、病院の都合によるときは支払わなくて良いです。

・治療上の必要性がある場合
・大部屋に空きがない場合

参考:差額ベッド(特別療養環境室)について|埼玉県

入院するときはいろいろと書類を書きますが、そのときに差額ベッド代についての同意書を書かされることがあります。

本来は支払わなくて良いのに、うっかり同意書にサインをしてしまうと面倒なことになります。入院費を大きく左右するのでよく理解しておいてください。

ただし、差額ベッド代は支払うつもりで

病院の都合で差額ベッド代のかかる部屋を利用するときは、その差額ベッド代を支払う義務はありません。

しかし、大部屋で同室になった人の相性が悪いときや、治療に専念したいなどの理由で個室を利用したくなるときもあります。

そういうこともあるので、差額ベッド代は払えるようにある程度の準備はしたうえで、なるべく払わないで済むようにするのが望ましいです。

差額ベッド代は入院費用を大きく左右しますので、よく覚えておきましょう!

結局、1回の入院費用はいくらかかるの?

医療費が100万円で所得区分がウの場合、健康保険が使える医療費の自己負担額は87,430円でした。

差額ベッド代が仮に3,000円とすると、1日あたりの入院費用は以下のようになります。

・5日入院の場合:87,430円+1,500円×5日+3,000円×5日=109,930円

・10日入院の場合:87,430円+1,500円×10日+3,000円×10日=132,430円

・20日入院の場合:87,430円+1,500円×20日+3,000円×20日=177,430円

このように計算すると、仮に入院給付金の日額を1万円にしていても、5日の場合と10日の場合は不足するように見えます。

しかし、医療保険に加入する人はたいてい手術給付金も受け取るので、話がややこしくなります。

手術給付金が話をさらに複雑化する

医療保険に加入していれば、たいていの場合は手術給付金がもらえます。

契約によって金額に差がありますが、一律で10万円としている商品もあれば、手術の種類によって入院給付金の10倍・20倍・40倍と定めているものもあります。

仮に先述の例で10万円の手術給付金が受け取れる場合、保険会社から受け取れる給付金の総額は以下のようになります(入院給付金は1日1万円とします)。

・5日入院の場合:10,000円×5日+100,000円=150,000円
・10日入院の場合:10,000円×10日+100,000円=200,000円
・20日入院の場合:10,000円×20日+100,000円=300,000円

そうすると、差額は以下のようになります。

・5日入院の場合:150,000円-109,930円=+40,070円
・10日入院の場合:200,000円-132,430円=+67,570円
・20日入院の場合:300,000円-177,430円=+122,570円

いずれも受け取る給付金のほうが、支払う費用よりも多くなっています。

ただし、入院が長引けば長引くほど収入の減少を無視できなくなります。そのため、収入の減少を補填するつもりで少し高めの入院給付金日額を設定しておくというのも1つの考え方になるでしょう。

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長期入院となった場合

入院が長期に及んだ場合のことも考えてみましょう。長期の入院が想定されるのは、主に統合失調症やうつ病などの精神疾患、脳卒中などです。

ここでは半年入院をしたときのことを想定し、100万円の医療費が6カ月続いたとします。実際はそんなに高額にはならないでしょうが、あくまで仮定の話としてとらえてください。

ここでも先述の例を使って試算します(差額ベッド代はないものとします)。

計算する前に知っておかないといけないのは、高額療養費制度の「多数回該当」です。これは、医療費が高額になることが過去1年間で4回以上あるとき、4回目からはより負担額が下がる仕組みです。この例では自己負担額が44,400円となります。

そのため、3カ月目までの金額と、4カ月目以降の金額は以下のように変わります。

・1カ月目~3カ月目:87,430円+1,500円×30日=132,430円
・4カ月目~6カ月目:44,400円+1,500円×30日=89,400円

そして、1日あたりの医療費は以下のように計算します。

・医療費の総額:132,430円×3カ月+89,400円×3カ月=665,490円
・1日あたりの医療費:665,490円÷180日=3,697円

差額ベッド代をかける場合は、これにその金額を加算することになります。仕事を休んでいることによる収入の減少を考えると、1日あたりの医療費はそれほど高くなくても、入院給付金を1日1万円とするのは妥当ではないかと考えられないでしょうか。

結局、働いている人なら1日1万円くらいにするのがちょうど良いのかもしれません。

おわりに

ネットで情報を探していても、論理の不明確な説明ばかりで入院給付金をいくらにしたら良いか、納得のいく説明を見たことがなかったのではないでしょうか。

しかし、こうしていろいろと条件を仮定して計算してみると、あいまいな説明ばかりになるのもうなづけます。

結論をいえば、治療費のみまかなえれば良いなら5,000円、差額ベッド代や収入の減少分を補填したいなら1万円とするのが1つの目安になるでしょう。