医療保険は妊娠「前」に検討すべき

出産を予定しているのであれば、妊娠する前に医療保険に入っておくことをおすすめします。出産時は給付金を受け取れる可能性が高いことと、トラブルが起きた場合はその後の保険加入に制約を受けることがあるからです。この記事ではその点について詳しく解説します。

FP横山

出産は医療保険について考える絶好のタイミングです。

出産とお金について

まず、出産とお金についての基礎知識を整理します。

出産育児一時金42万円がもらえる

健康保険の加入者や扶養されている人は、出産育児一時金を1人につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合は40.4万円)を受け取ることができます。双子などの多胎妊娠であれば人数分もらえるということです。

正常に出産できたときだけでなく、妊娠85日以降の早産、死産、経済的な理由による人工妊娠中絶でも受け取ることができます。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
参考:出産に関する給付|全国健康保険協会(協会けんぽ)

産科医療補償制度とは、出生した子どもが所定の脳性麻痺の定義に合致すること等、所定のの条件を満たした場合に補償金を受け取れる制度です。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
参考:産科医療補償制度|公益財団法人 日本医療機能評価機構

出産にかかる一般的な費用は40万円~50万円くらいですが、出産育児一時金でその大半はまかなうことができるということです。

出産時のお金のかかり方

出産は何事もなく無事に終わる場合(正常分娩)と、何かしらの異常(異常妊娠や異常分娩)が生じる場合があります。

正常分娩の場合にかかる費用は健康保険が使えず、すべて自己負担になります。しかし、異常妊娠や異常分娩のときは健康保険が使えますので基本的に3割負担で、高額療養費制度も使うことができます。

高額療養費制度とは、医療費が所定の金額を超える場合に患者の自己負担をおさえるための仕組みです。たとえば医療機関で50万円の費用が発生した場合、3割負担なら自己負担額は15万円ですよね。

しかし、高額療養費制度を使うと、仮に年収が300万円程度の世帯であれば自己負担額の上限は57,600円になります。これに健康保険が使えない費用(食事代や差額ベッド代など)を加えた金額が最終的な自己負担額となります。高額療養費制度については以下の記事をご覧ください。
1週間の入院にかかる費用の目安を計算する方法

なお、出産の場合は健康保険が使えない費用が多く発生しますので注意してください。

出産のトラブルについて

異常妊娠と異常分娩

出産にまつわるトラブルはいろいろありますが、これを「異常妊娠」と「異常分娩」に分けて説明されることが一般的です。

異常妊娠とは、受精卵の着床あるいは胎児の数や発育に異常のある妊娠をいい、胞状奇胎(ほうじょうきたい)、子宮外妊娠がその代表例です。

異常分娩とは自然分娩ではない分娩で、骨盤位分娩(逆子の分娩)、鉗子(かんし)分娩、吸引分娩、帝王切開などが該当します。

これらの中で生じる確率が高いのが帝王切開で、厚生労働省のデータによりますと、一般診療所での帝王切開による分娩割合は2008年で13.0%、一般病院だと23.3%となっています。
参考:平成22年度我が国の保健統計2-11|厚生労働省

このほか切迫早産や切迫流産についてよく知っておいてください。これらは異常妊娠にも異常分娩にもあたらないのかもしれませんが(調べてもわかりませんでした)、出産にまつわる異常の1つであることは間違いありません。

以上の中でお金の面で一番、注意が必要なのは切迫早産です。

切迫早産の入院期間は長くなることがある

出産の異常の中でも切迫早産についてはあらかじめよく知っておきましょう。

早産とは妊娠22週0日~妊娠36週6日までの出産をいい、全妊娠の5%が該当します。一般的に早く産まれた赤ちゃんは小さく、のちに重篤な障害が残る可能性が高いです。

切迫早産は早産の一歩手前の状態です。子宮収縮が頻回に起こり、子宮の出口(子宮口)が開いて赤ちゃんが出てきそうな状態や破水してしまった状態のことです。

切迫早産と診断された場合はとにかく安静にして過ごすことが求められます。自宅安静のこともあれば入院になることもあります。

入院期間は個人差が大きく、長ければ2ヶ月~3ヶ月に及ぶこともあります。以下のサイトが参考になりますのでよく読んでおいてください。お金のことだけでなく、切迫早産と診断されるとどんな状態になるのかなどについての知識も重要です。
参考:切迫早産経験した方、教えてください|ジネコ

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民間医療保険が役立つ

異常妊娠や異常分娩のときは給付金が受け取れる

民間の医療保険に加入している場合、異常妊娠や異常分娩で入院したり手術したりしていれば基本的に給付金を受け取ることができます。

たとえば入院1日あたり1万円、手術をすると10万円という条件で加入していて、異常妊娠や異常分娩で10日入院した場合は20万円を受け取れます。ただし正常分娩は対象外なので注意してください。

また、切迫早産でも自宅安静の場合は給付金の支給対象になりません。医療保険はあくまで入院保険なので、入院していないと給付金は受け取れないのです。

医療保険は妊娠がわかる前に加入しよう

医療保険に加入するなら妊娠が分かる前に加入すべきです。

なぜなら妊娠してから加入しようとしても、肝心の出産にまつわる異常が保障されなくなってしまいます。また、出産で異常があった場合はその後に加入しようとしても告知で引っかかってしまいます。

妊娠してから加入を希望する場合は、正常分娩で出産が終わればその後なら問題なく加入できます。ただし異常分娩の場合はしばらく制限がつきますが、これは仕方ありません。

医療保険は無理に加入しないといけない保険ではないので、不利なときに加入するのは控えたほうが良いです。

おすすめの医療保険の入り方

医療保険の基本は入院給付金と手術給付金です。

入院給付金は入院1日あたり5,000円~10,000円の間で設定するのが一般的ですが、出産の間は手厚くしておいて、子どもを産む予定がなくなったら減額するということもできます。

あるいは女性疾病特約(女性特有の病気を手厚く保障する特約。保険会社によって名称は異なります)をつけておいて、出産の予定がなくなったら外すという方法もあります。

ただしこの場合は切迫早産が保障の対象に入っているかどうかを確認してください。

たとえば損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「女性のための入院保険 フェミーヌ」では、約款の中に「分娩の合併症」という記載がありますので切迫早産は保障の対象となります。アフラックの医療保険「EVER」の女性疾病入院特約も同様です。
参考:第15章 妊娠,分娩及び産じょく<褥> (O00-O99)O60|ICD-10(国際疾病分類)

約款を読みこなすのは大変なので、代理店で相談して調べてもらうのがおすすめです。

おわりに

医療保険はその有用性がかなり議論されていて、不要だと主張するファイナンシャルプランナーも多くいます。

ただ、出産時に限って言えばとても費用対効果が優れているので、出産の予定がなくなるまで加入しておくというのは1つの方法です。

出産で異常があると、医療保険以外の保険についてもその後しばらくは加入しづらくなります。そのため、この機会に保険ショップなどに相談に行ってみてはいかがでしょうか。