新社会人はどんな生命保険に入るべきか

新社会人の方が「社会人になったのだから保険のこともしっかりしておこう」と考えてこの記事を読んでくださっているなら、かなり意識の高い方でしょうね(ヨイショしているわけではありませんよ……)。

ただ、加入すべき保険を正しく判断するためにはある程度の知識が必要です。

そこで、この記事では新社会人のみなさんが保険をどのように考えるべきかについて解説します。

FP横山

保険は問題が起きる前に検討するものです。

そもそも新社会人に生命保険は必要?

普通の新社会人の方であれば「まだ保険なんていらない」と考えている人のほうが多いのではないかと思います。

しかし、保険は問題が起きてからではなく問題が起きる前に加入するものです。そのため、必要性を意識しないときにしっかり考えておくことが必要です。

民間の生命保険に加入することを検討するときは、まず公的保険についての知識が前提となります。そこで、ここでは公的保険について簡単に説明します。

新社会人となった時点で加入している公的な保険

日本は社会保障制度が整備されているので、会社員や公務員として働くのであれば、その時点で多くの保険に加入しています。

たとえば健康保険(公的医療保険)、国民年金・厚生年金保険、雇用保険(失業保険)がその例です。40歳を過ぎると介護保険にも加入します。

何かあればこれらの保険からお金を受け取ることができる仕組みになっていますが、それだけでは足りないことも多いです。

その不足分を補う手段は貯蓄か保険ですが、若いうちは貯蓄が十分にないという人のほうが多いでしょう。その場合は民間の保険に加入する必要があるというわけです。

年金も仕組みは保険と同じです!

一番大事なのは健康保険の「高額療養費制度」

入院すると大金がかかるのではないかと思うでしょうが、実は、盲腸などごくありがちな病気による短期間の入院なら大金は必要ありません。入院したときに活躍するのが健康保険の「高額療養費制度」です。

この制度のおかげで、ごく普通の入院なら医療費についてはそれほど心配する必要はありません。目安として、1回の入院で10万円程度のお金があればたいていの人は何とかなります。

この点については以下の記事をご覧ください。

高額療養費制度について必ず知っておきたい知識のまとめ

病気やケガで4日以上休む場合は健康保険から「傷病手当金」が受け取れる

傷病手当金とは、病気やケガが原因で4日以上続けて休んだ場合に、給料の約3分の2に相当する金額を健康保険から受け取れる制度です(4日目以降の休んだ日数分)。

会社を休んでも有給を使えば収入の減少を補うことができますが、休む期間が長期にわたると日数が足りなくなることもあるかもしれません。

しかし傷病手当金は最大で1年半、受給することができるのでメリットは大きいです。有給と併用することもできます。

ただし、金額の計算においてはボーナスの分は考慮されません。あくまで毎月の給料の約3分の2である点に注意してください。

想定されるリスクとおすすめの保険

生命保険はリスクに備えるために加入するものです。

もし新入社員のあなたが保険代理店に相談に行くとすると、保険屋さんから以下のようなリスクについて説明を受けるはずです。

  • 病気で入院するリスク
  • 働けなくなったときのリスク
  • 葬式代のリスク
  • 老後の生活費が不足するリスク

以下で1つ1つ解説します。

病気で入院するリスク

若いうちは病気で入院するなんてあまり想像しないでしょうし、実際に入院する人の数も限られています。しかし、入院する可能性がゼロかと言われれば、決してそうではないですよね。

若いうちは入院することもそれほどないでしょうが、決して確率はゼロではありません。また、がんにかかって高額な治療費がかかることもあります。こうしたリスクには医療保険やがん保険が役立ちます。

働けなくなったときのリスク

ケガや病気が原因で働くことができなくなることを保険の世界では「就業不能」と言います。

こうした状態になって収入が得られなくなることに備える保険が「就業不能保険」(所得補償保険とも言います)です。

このような事態になることは、病気で入院したりがんと診断されたりすることと比べればさらに確率は低いので、あまり保険相談でも強くおすすめされることはないでしょう。

ただ、医療現場で実際に就業不能状態にある患者を数多く見ている医師たちは、決して就業不能保険が役立たないものとは考えていないようです。詳しくは以下の記事をご覧ください。

就業不能保険、医師は必要と考えている人が多い

なお、先述した傷病手当金もありますし、終業不能状態になると国民年金から「障害年金」を受け取れる可能性が高いことを知っておいてください。

葬式代のリスク

保険相談に行くと、葬式代を準備するためという理由で「終身保険」という貯蓄型の保険をすすめられることが多いです。

しかし、葬式代についてはあまり心配しなくても良いでしょう。葬式代は200万円かかると説明する保険屋さんが多いようですが、大規模な葬儀でなければ今はもっと安い費用で可能です。

また、20代のうちに万が一のことがあればお葬式を出すのはご両親ではないでしょうか。そのため、若いうちから葬式代を気にするというのはナンセンスという気がします。

葬式代と保険については以下の記事を参考にしてください。

終身保険で葬式代を準備する前に、葬式代を安くすることを考えるのが先

老後の生活費が不足するリスク

年金制度が仮に現状のまま続いたとしても、一般的な収入で老後をむかえるのであれば、年金として受け取れるのは月10~20万円くらいです。

結婚して共働きを続けるなら、世帯全体ではこの金額が2倍くらいになるのでそれほど問題ないでしょう。ただし、妻が専業主婦の場合はもっと年金が少なくなります。

保険相談に行くと、老後の生活費が不足する可能性に備えて個人年金保険をすすめられることがあるでしょう。

しかし、私は個人年金保険はおすすめしません。個人年金保険に限らず、低金利の今は貯蓄型の保険に加入してもメリットが乏しいからです。

それより、長い目でみてキャリアを積んだりスキルを高めたりして収入を増やすことを考えてください。

何でもかんでも保険が最適、というわけではありません。

みんなはどう? 生命保険の加入率と保険料の平均について

保険の加入については他人と比較しても仕方がないのですが、やはり気になることは確かですよね。そこで、他の人はどうしているのかというデータを示して解説します。

20代の生命保険加入率

生命保険に関する実態調査を行う生命保険文化センターでは3年に1度、個人を対象に「生活保障に関する調査」というものを行っています。

平成28年度の調査結果によると、20代で「医療保障に対する私的準備状況」として「生命保険」を選んだ人は50.1%となっています。

また、ガン保険・ガン特約の加入率については21.8%、個人年金保険その他の生命保険(損害保険会社の年金型商品も含む)については27.9%です。

これを見る限り、新社会人となってすぐかどうかはともかく、意外と加入している人が多いという印象ではないでしょうか。

個人年金保険への加入率が少し高すぎる気もしますが、しっかり考えている人はこっそり保険に加入しているのかもしれません。

引用元:調査結果一覧-1(Excelファイル)平成28年度「生活保障に関する調査」(平成28年12月発行)|生命保険文化センター

20代が支払っている生命保険料の平均

前項の調査は個人を対象にしたものですが、この調査では払込保険料の平均値に関するデータはありません。

そのかわり、「生命保険に関する全国実態調査」という世帯を対象とした調査には保険料のデータがあります。

平成30年度に行われた調査によると、世帯主が29歳以下の世帯が払っている保険料の平均は23.3万円となっています。

「月に2万円も?」と感じたあなたは正しいです。なぜなら、この数値は貯蓄型の保険と掛け捨ての保険をわけて調査していないので、データとして意味をなさないからです。

先述したとおり、個人を対象にした調査では医療保険の加入率が約50%、がん保険が約22%、個人年金保険が約28%という結果でした。

そこで、これらに加入したらいくらくらいの保険料を払うことになるか考えて、保険料の平均値を判断するのが良さそうです。

そうすると、医療保険なら月2000~3000円、がん保険なら月1500~2000円、個人年金保険なら月1~2万円程度ではないかと考えられます。

他人のことはあくまで参考程度にとらえてください!

加入するタイミングは「思い立ったとき」でいい

保険にはいつ加入したらいいのか、そのタイミングで悩んでいる人も多いでしょう。

結論から言うと、悩んでいるくらいなら加入してしまったほうがいいです。以下ではその理由について解説します。

若いうちに保険に加入すると損なの?

若いうちに保険に加入すると、毎月の保険料が安くても総額では損だという人がいるようです。

しかし、保険料の総額を計算してみると決してそうとは限りません。ホームページで保険料の試算ができる保険会社がたくさんあるので、例を出して説明します。

たとえばライフネット生命の終身医療保険「新じぶんへの保険」の保険料を計算すると以下のとおりです(入院給付金日額5000円、エコノミーコース)。

  • 23歳男性:1,198円
  • 30歳男性:1,470円
  • 40歳男性:2,000円

この保険料は終身払いの金額なので、加入している間はずっと保険料を払い続ける必要があります。仮に80歳で死亡すると仮定すると、支払う保険料の総額は以下のようになります。

  • 23歳で加入した場合:819,432円
  • 30歳で加入した場合:882,000円
  • 40歳で加入した場合:960,000円

23歳で加入する場合が最も加入期間が長いのにもかかわらず、総額で一番安くなっていますよね。

これは、保険会社が預かった保険料を運用に回せる期間が長いからと理解しておけば良いでしょう。必ずしもこのような結果になるわけではありませんが、こうした結果になることは珍しくありません。

総額でも安く、かつ保障も得られるなら加入をためらう理由はないはずです。

後回しにしていると加入できなくなるかも

保険の種類や症状によって違いますが、保険は健康状態が良くないと加入できなくなったり保険料が普通の人よりも高くなったりします。

そのため、加入したい保険があるなら大きな病気にかかる前に検討するのが望ましいです。

ちなみに女性にとっては妊娠も病気と同じような扱いになります。出産が終われば問題ありませんが、出産はリスクが高いため、妊娠前は医療保険を検討するのに適したタイミングでもあります。

結婚のタイミングで見直しを

新社会人になって間もないうちに保険に加入したのなら、次は結婚するときに保険を見直しましょう。

特に子どもが産まれると、万が一のことがあったときに遺族の生活費を確保する必要性が高くなります。そのため、保険を見直す必要性がとても高い時期なのです。

ただし結婚しなくても、より良い保険が新たに発売される可能性があるので定期的に見直しをしたほうが良いでしょう。3~5年程度で見直しをするのがおすすめです。

保険の新規加入や見直しはどこで相談する?

保険に加入したり見直しをしたりするときは、どこで相談しますか? おそらく「保険代理店」を思い浮かべた人が多いのではないでしょうか。

保険の加入を真剣に考えているのであれば、以下の3点を知っておいてください。

団体保険について

規模の大きい会社なら、団体保険が用意されていることが多いです。

団体保険は会社単位で保険会社と契約しているもので、同じ程度の保障内容の保険に加入するなら団体保険として加入したほうが保険料は安くなります。

会社の先輩や上司が保険をすすめる場合、この保険について話をしているのであれば、それはきちんと聞いた方がいいです。

ただこの団体保険は、会社を辞めてしまうと契約が終了という扱いになることが多いようです。そのため、加入する前にその点をしっかりと確認しておきましょう。

複数の保険会社の商品を扱う「乗合代理店」の存在

街中で保険ショップを見かけることが多くなりましたが、これらはすべて「乗合代理店」という保険代理店です。

「乗合代理店」は複数の保険会社の商品を扱う保険代理店です。そのため1社専属の代理店と比べてより良い保険の提案を受けることができます。

以下の動画は第一生命ほけんショップのものですが、イメージとしてはこんな感じだと思ってください(第一生命ほけんショップは乗合代理店ではありません)。

乗合代理店の相談員はお客さんから必要な情報をヒアリングし、パソコンのソフトに入力した上であなたの条件に合う商品を提案します。したがって、何となく自分の売りたい商品をすすめるのではありません。

保険料は長い間、払い続けるものです。そのため総額ではかなりの金額になります。それを比較しないで決めるなんて今どきあり得ません。

そのため、保険を選ぶときは保険会社の営業担当や1社専属の外交員から加入するのではなく乗合代理店で加入しましょう。

会社に出入りする外交員による、しつこい保険営業のスマートな断り方

今はだいぶ減っていますが、会社に出入りしている保険屋さんもまだいるようです。

こうした保険屋さんは出勤するときに必ず通らないといけないような場所で待機していることが多く、加入する気のない人からすれば非常に迷惑な存在です。

彼女らは(大半が女性なので)タイミングを見計らって営業をかけてきます。

さり気なく避けていても、向こうは必ず気付いています。特に新入社員のあなたは「ロックオン」されていると思って間違いありません。

やがて話しかけられ、親しくなった(と勘違いした)タイミングで保険の話を切り出してきます。

こうした営業をかけられたときに使うべき、今どきのスマートな断り方は以下のとおりです。

「友達が保険ショップで働いているので……」

「親戚に保険屋さんがいますので」という断り方は昔から使われていてウソくさいので、今風に言うならこの方がスマートです。

大事なことは「完全にあきらめさせる」ということです。

一度話を聞いてやんわり断ろうとしても、別の提案をしてきたり、結論を迫ってきたりして面倒です。加入する気がないなら具体的な話を聞かないことが大事です。

保険ショップで働いている友だちがいるなら、まず勝てないと考えるはずです。

おわりに

新社会人のあなたには、保険のことよりも優先すべきことがたくさんあります。保険のことを考えるのは仕事に慣れ、一段落してからで十分間に合います。

しかし、落ち着いたらしっかりと時間を取って人生のリスクと向き合うことは必要です。

本格的に相談したいなら、複数の保険会社の商品を扱っている乗合代理店がベストです。今すぐ保険に加入する気がなくても、それだけは少なくとも覚えておいてください。

保険ショップの存在は意識しておいてください。