退職代行を利用して本当に退職できる? 弁護士を利用すればできるはず

勤務先に対して退職したいという意思を代わりに伝えてくれる「退職代行」サービスが話題です。

第三者を通じて「お宅の会社に勤める◯◯さんが退職したいと言っています。手続をお願いします」などといきなり言われたら、きっとほとんどの人が面食らうはずです。

でも、それでも実際に退職することが可能であることはどうやら間違いなさそうです。なぜなら、弁護士さんで退職代行サービスを行う人が増えているからというのが一番の理由です。

この記事では主に以下のような人に対し、退職代行サービスを利用した退職がなぜ可能なのかという理由について、掘り下げて解説します。

  • 勤め先を今すぐにでも、退職代行サービスを使って退職したい。でも本当に退職できるの?と疑っている
  • 退職代行サービスの退職成功率が100%と言われている理由を知りたい

退職代行サービスを行う主体は、一般の業者と弁護士の2種類

退職代行サービスを利用して本当に退職できるのかということを知りたい場合、まず、このサービスを行う主体が以下の2つに分かれるということを知ってください。

  • 一般の業者
  • 弁護士

このどちらに依頼しても結果的に退職できる可能性は高いのですが、大きなトラブルなく退職できるかどうかについては差が生じるのではないかというのが私の今の考えです。

NHKがクローズアップ現代で取りあげている

退職代行サービスの先駆者で、世に知らしめたのは「EXIT」という会社(一般の業者さんです)ではないかと思います。月間で約300件の相談があるとのことです(2018年11月現在)。

NHKが同社を取材し、番組で取りあげたときの記事がNHK「クローズアップ現代」の公式ブログに掲載されているので、退職代行サービスの利用を考えているならぜひ読んでください。

この記事によれば、辞めたいという意思を告げても「ここまで育てたのに何だ」「損が出たら賠償請求する」などと言われて引き留められ、悩んでいる人が多いということです。退職代行サービスを提供する業者さんのホームページにもだいたいこのようなことが書いてあります。

全国の労働局に寄せられる相談件数も「退職」の件数が「解雇」の件数を逆転したようで、この話を裏付ける1つの理由となっています。

簡単に退職させてもらえない理由

労働者が退職しづらくなっているのは「人手不足」が原因の1つのようです。

特に中小企業の場合、大学生などを対象にした求人倍率は約10倍ということで、1人抜けたらその穴を埋めるのは簡単ではないというのは理解できます。

あと、退職を告げられる上司にとっても自分の評価が下がるとか、辞めた人の仕事を他の部下に頼まなければいけないということもあって、簡単に辞めたいという希望を認めるわけにはいかないという事情もあるようです。

退職代行サービスを使うのは本当に非常識なのか

一見すると「非常識な辞め方」「我慢が足りない」と見える退職代行サービスですが、一概にそうとは言えないととらえたほうがいいのかもしれません。

もちろん、単に「希望の部署に配属されなかった」「通勤するのがかったるい」「上司が生理的にムリ」のような理由で簡単に辞めてしまうのはどうかと思います。

しかし、月に100時間もの残業をしているような職場で、「あなたが抜けたらどうなるのか」と言われて辞めるに辞められないという状況に追い込まれている人もいるようなので、それならこうした強引な辞め方にも一理あると言えるのではないでしょうか。

労働者が会社を辞めるためには会社との合意が必要と思っていた人も多いのではないかと思いますが、民法627条1項には次のような規定があります。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

正社員やアルバイトはいつまで雇用するというのを決めずに採用されているので、辞めたい日の2週間以上前に申し出ていれば、会社はこれを断ることができないということです。

この規定がなぜ存在するのかというと、究極的には憲法22条の「職業選択の自由」や18条の「奴隷的拘束の禁止」から来ているようで、労働者の人権を守る目的で定められているわけです。そう聞くと納得ですよね。

一般の業者さんが言っているだけならウソくさく感じることもあるでしょうが、複数の弁護士さんが提供しているサービスなのですから、実際にこのサービスを利用して退職することは十分に可能、と考えられるわけです。

一般の業者と弁護士、どちらを利用するべき?

これらのうち、どちらを利用すべきかと言えば間違いなく弁護士さんが提供するサービスです。

アルバイトの退職なら一般の業者さんでも大丈夫かもしれませんが、正社員の退職なら弁護士さん一択ですね。私が利用するなら100%、弁護士さんを選びます。

なぜかと言えば、退職にあたり未払いの残業代があるときや有給休暇を消化したいといった交渉ごとがあるときは、一般の業者さんでは対応できないからです。

これらの行為を弁護士以外の人が行うと、弁護士法第72条の「非弁行為」に該当し、弁護士法違反となってしまいます。

一般の業者さんができるのは、あくまで依頼人からの退職の意思を代わりに伝えることだけです。でも実際はグレーな部分に足を踏み入れているケースもあるのではないかと想像します。

法曹関係者の間では、単に退職の意思を伝えるだけでも非弁行為にあたるのではないかと考えている人も多いようです。そのため、確実に退職するなら弁護士さんの提供するサービスを利用するのが無難でしょう。

企業側の退職代行サービスについての認知度もかなり高まっているようなので、多かれ少なかれ対抗手段を用意して抵抗してくることも考えられます。そうすると、一般の業者さんで十分な対応ができないケースが増えてくるのではないかと思います。

退職代行サービスを提供していない弁護士さんからは、一般の業者さんが仲介して会社と話がつかず、結果として依頼人が宙ぶらりんの状態になる可能性も指摘されています。

参考:「退職代行サービス」の裏で急増、弁護士資格持たない悪質業者トラブル

弁護士さんに依頼したほうが、トータルでは安くなるかも

費用については正社員の場合、一般の業者さんだと2~5万円、弁護士さんの場合は3~5万円程度で、弁護士さんの場合は5万円程度が多いようです。

たとえば一般の業者である退職代行「SARABA」では、正社員の退職代行を2万9800円(税込)で引き受けています。弁護士法人エースの場合は5万4000円(税込)です。

あと、弁護士さんに未払い残業代や有給休暇などの交渉を依頼する場合、着手金無料、完全成功報酬制で得られた経済的利益の20%程度を別途支払うというのが一般的な相場です。この他、郵送料などの実費が必要です。

このように説明すると一見、一般の業者さんよりも弁護士さんに依頼するほうが高いと感じるかもしれません。

しかし、経済的利益の20%というのはあくまで得られた利益から払うものなので、プラスアルファでかかるコストではありません。

そのため、たとえばほとんど有給休暇を取らせてもらえなかったというようなケースでは、弁護士さんに頼んだほうがトータルでは安くなるかもしれません。

おわりに

退職代行サービスというものを知ったときは非常識と感じたものですが、いろいろと調べていくうちに、ちゃんとした理由がある分には利用価値のあるサービスだと思うようになりました。

資本家が労働者を搾取するのが当たり前だった時代も過去にはあり、それで労働組合という仕組みができたわけですが、そのような歴史を考えると、今の時代の労働者がこのような手段で対抗するというのは決しておかしなことではないのかもしれません。

NHKが取りあげたことや、弁護士さんで参入する人が多いことから考えても、こうしたサービスを利用することが妥当と言える人はたくさんいるでしょうし、今後、定着するのではないでしょうか。

ブラック労働を強要されて辞めるに辞められないという人は、とりあえず退職代行サービスを行っている弁護士さんに相談だけでもしてみるのがいいかもしれません。